ADB、バングラデシュ経済回廊(BEC)を構想

(バングラデシュ)

調査部アジア大洋州課

2023年09月01日

アジア開発銀行(ADB)は、バングラデシュ北東部と南西部の経済的潜在力を評価し、包括的かつ持続可能な開発を達成するため、同地域の総合的開発を提案することを目的に、「バングラデシュ経済回廊開発ハイライト(Bangladesh Ecomic Corridor Development Highlights)」を6月に発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

バングラデシュ経済回廊(BEC)構想は、産業、交通、社会インフラに取り組み、バランスの取れた分散型開発を目指すもの。ADBが提案するBECは、南西部(クルナ管区)からダッカを経由して北東部(シレット管区、マイメンシン管区)に至る14県にまたがり、同国総人口の34%を占める。想定される回廊開発は2段階に分けて行われるとされ、第1フェーズで南西バングラデシュ回廊(SWBEC)、第2フェーズでは北東バングラデシュ経済回廊(NEBEC)が予定されているという。

現在、バングラデシュの経済成長は主にダッカ管区とチョットグラム管区に集中しており、他地区は成長促進に不可欠な物理的・社会的インフラの不足によって遅れていると指摘した。ADBのエディモン・ギンティン国別ディレクターは、こうした課題に対処するため、バングラデシュには構造転換を促進し、国全体の福祉を向上させる総合的な開発戦略が必要だとした。

経済回廊は、次の3点の成長を促進させる要素を含んでいる。

  1. 貿易および輸送回廊
  2. 国内市場と国際貿易のための商品を生産する生産クラスターの集積
  3. 生産地からの商品や国際ゲートウエー経由で輸入される商品の主要市場(都市拠点)

また、これらの要素は、労働力、技術、支援サービス、知識、イノベーションの供給源としても機能する。

BEC地域は人口とカバーエリアの広さから地理的優位性が高い。同地域は、モングラ海港やペイラ海港など海上・国際貿易でキーとなる8つの主要貿易港を抱えており、バングラデシュ北東部の農産物や産業はインド北東地域の消費市場への進出が見込める(注)。また、ネパールやブータンといった隣国との近接性も活用することも可能だ。

ADBは、経済回廊が実現した場合、同地域の経済生産高は2020年の320億ドルから、2050年までに2,860億ドルに急増する可能性があるとし、経済回廊によって創出される総雇用者数は、2025年に1,570万人、2050年には7,180万人に拡大すると見込んでいる。

(注)バングラデシュとインド北東地域の連結性については、以下の地域・分析レポート2023年8月1日「バングラデシュとインド北東地域の連結性」(1)(2)(3)が詳しいので、参照を。

(寺島かほる)

(バングラデシュ)

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