イスラム「聖典侮辱」反発 対スウェーデン外交問題に
【カイロ、ロンドン=共同】北欧スウェーデンで20日、男性がイスラム教の聖典コーランを踏みつけたデモを受け、イスラム諸国が「侮辱行為」と強く反発した。スウェーデンでは「表現の自由」の下、コーランに火を付けるデモも許可されてきた。イラクはスウェーデン大使に国外退去を通告。イランやカタールは大使を呼び出して抗議し、外交問題に発展している。
20日のデモ計画が伝えられた後、イラクの首都バグダッドでは数百人がスウェーデン大使館を襲撃し、火を放った。スウェーデンは批判したが、イラク首相府は逆にスウェーデンで再びコーランが燃やされた場合、断交に踏み切ると警告。対立が先鋭化している。
ロイター通信によると、スウェーデン外務省は21日、安全上の理由から、派遣している大使館職員と業務を首都ストックホルムに一時的に移したと明らかにした。
スウェーデンでは今年1月、デンマークの極右政治家がコーランを燃やした。警察当局はその後、治安リスクの観点からデモでコーランに火を付けるのを禁じたが、裁判所が「デモの権利」を理由に認めた経緯がある。
これを受け、6月にはストックホルムにあるモスク(イスラム教礼拝所)前でイスラム教徒ではないイラク出身の男性がコーランを燃やした。20日のデモを行ったのも同じ男性だった。
サウジアラビア外務省は20日、スウェーデンに「即時かつ必要な対策」を要求。イスラム協力機構(OIC)はデモを許可し続ける当局に「深い失望」を表明した。エジプトにあるイスラム教スンニ派最高権威機関アズハルはスウェーデン製品の不買運動を呼びかけた。トルコ当局はデンマークの極右政治家のほか、今回コーランを踏みつけた男性らに対する逮捕状を出した。