<ぱらぱらじっくり 教育に新聞を>新渡戸文化高校のNIE 調べる対象、自分で決める

2023年7月4日 07時22分

自分で選んだ新聞記事が探究の出発点になった=新渡戸文化高校で

 東京都中野区の私立・新渡戸(にとべ)文化高校では、生徒の個性が尊重される。ひとりひとりの「やりたい」や「好き」がとことん重視される。その校風は、新聞記事を活用した学びでも大切にされている。
 六月中旬。三年生を対象にした選択授業「国語表現」の教室。生徒たちは順番に、それぞれの調べ学習の成果をスライドを使いこなしながら発表していた。テーマは先生から与えられた「課題」ではなく、生徒が自分で新聞をめくって記事から選んだ。
 ある生徒は日経新聞の記事を起点にイスラム教徒向けの「ハラル認証」について深掘りした。別の生徒は朝日新聞を手がかりに、外国人労働者との共生のあり方を考察。日本の労働者不足事情を踏まえた上で「単なる労働力としてとらえるんじゃなく、地域社会で一緒に暮らしていこうねという認識が必要」と自分の意見を話した。
 「多摩市とアイスランドの交流」を選んだ生徒はジェンダーギャップ指数で世界一位を続けるアイスランドの男女平等について説明。「ロシアのウクライナ侵攻」を選んだ生徒は、戦争を日本での普段の生活で自分事として受け止める難しさを話した。アニメ海賊版の摘発を伝える記事から著作権という難しいテーマに向き合った生徒も。
 発表した努力には必ず拍手が送られる。同級生が「お疲れさまです」と慰労しつつも疑問に感じた点を質問としてぶつける。発表者側は「ありがとうございます」と礼を言って懸命に答える。学びを敬うムードが教室にある。
 この授業では小論文や面接で合否が選考される大学受験の「総合型選抜」の突破を想定して勉強する。小論文学習の教科書も用意されているが「多面的にものごとを見る力をつけてほしい」(指導教諭の高橋伸明さん)と新聞を副教材に活用してきた。
 調べ学習の出発点として使う価値が新聞にあるのか-。その点もあらかじめ生徒に考えてもらった。情報が校閲され、十分にチェックされていることから「新聞を使うのが適切」と合意して使っているのだという。
 この日、毎日新聞に掲載された「原油 来年末まで減産延長」という、普通の高校生の関心事からは縁遠そうな経済記事を選んで調べてきた生徒がいた。「どうしてこんな難しい記事にしたの?」と記者が質問すると、生徒は「受験対策というより、これから先の自分(の人生)にとって何かを生かせるかもと、わくわく感をもって学ぶほうが大きい。自分の目にこれまで触れていなかった記事を探して選びました」と話した。 (東松充憲)

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