大阪・関西万博の会場が設けられる大阪・夢洲(ゆめしま)です。
会場を囲む「大屋根リング」がつながり、仕上げの作業を残すだけになっています。
2018年から現在までの会場の移り変わりを動画で↓↓↓
(データ放送ではご覧になれません)
大阪・関西万博 開幕まで100日 前売り券の販売苦戦など課題も
大阪・関西万博の開幕まで3日で100日となりました。
ことし4月13日から半年間、開催され「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、158の国と地域が参加。会場の建設作業も続いています。
(記事内では2018年からの会場の移り変わりを動画でご覧いただけます)。
ただ前売り券の販売が目標に達していないほか、人手不足が続く中、運営スタッフの確保に苦戦するところも出ているなど、課題もあります。
【動画も】パビリオンなど会場の建設続く
大阪・関西万博の会場では、参加国や企業・団体のパビリオン、それに独創的なデザインの休憩所やトイレなどの建設工事が続いています。このうち、博覧会協会が発注する工事の進捗率は、先月中旬の時点でおよそ7割まで進んでいるということです。
一方、意匠を凝らしたデザインから「万博の華」とも呼ばれる参加国が自前で建設するタイプの海外パビリオンは、当初60か国が出展を予定していましたが、準備の遅れなどから出展方法を変更したり撤退したりする国が相次ぎ47か国となりました。
先月9日に、地中海の島国マルタが、建設工事を開始し、自前の建物で出展する国、すべてが建設に着手しました。アイルランド、フィリピン、韓国の3か国はすでに建物の建設を終えているほか、複数の国が完成間近だということです。
ただ、内装工事や展示の準備作業も残っていて、開幕まで100日となるなか日本には、ホスト国として各国へのきめ細かい支援が求められています。
オランダパビリオンは完成間近

参加国が自前で建設するパビリオンの1つ、オランダパビリオンは直径11メートルの球体が、波打つ外装に載っている特徴的なデザインで、建物は完成間近となっています。
会場が大阪湾の人工島とあって、建物が重みで沈み込まないよう工夫がされていて、深さ2.5メートルまで土砂を取り除きそこに軽い発泡スチロールを敷き詰めてその上に建物を建てることで、地盤にかかる重さを減らしています。
建設会社は、去年4月に始まった残業時間の上限規制に対応しつつ工期に間に合わせるため、現場の社員を増やすとともに、就業時間で2つのグループに分けることで、残業時間を抑えながら工事を進めてきたということです。

さらに、持続可能な社会を意識し、建物は、万博が終わった後も、別の場所で再利用する予定で、柱や「はり」にはQRコードを貼り付け、再び組み立てるときに、どの部分の部材か簡単に確認できるようにしています。

担当する建設会社 山下哲一所長
「これだけ1つ1つの部材に愛着を感じながら仕事をするのは不思議な気持ちだが、そういったことが循環型社会につながると思う。パビリオンは我が子のような建物だと思っている」
オランダパビリオン マーク・カウパース政府代表
「世界は使い捨てモデルから物を使い続けるというコンセプトに変わる必要がありパビリオンの展示だけでなく建設でも循環型を実現した。循環型社会への取り組みを伝え、訪れた人たちに一緒に社会を変える一員になることを呼びかけたい」
前売券の販売状況 運営側の目標下回る
大阪・関西万博の前売券の販売状況は、運営側の目標を下回っていて、開幕までに万博への関心を高められるかが、依然、課題となっています。

実施主体の博覧会協会は、前売券の販売目標を1400万枚としていますが、先月25日時点で、740万枚余りにとどまっています。
経済界は、700万枚を目標に前売券の購入を呼びかけ、すでに多くの企業がこれに応じていると見られていますが、関西では、20万枚を購入している関西電力と、15万枚を購入している大阪ガスが、さらにそれぞれ5万枚の追加購入を決めています。

博覧会協会の副会長をつとめている関経連=関西経済連合会の松本正義会長は、販売状況が低調なことは課題だとしたうえで…。
関経連 松本正義会長
「海外へのPRはいろいろやっていると思うが、まだ十分ではない。海外で宣伝し、チケットを買ってもらうことが必要だ」
万博の運営費は、1160億円に上りますが、その大部分は、入場券の販売でまかなわれます。博覧会協会では、購入しやすいようこれまで販売していた来場予約が必要な電子チケットに加え、予約なしで入場できる紙チケットの販売をコンビニなどで始めました。
さらに、展示内容がよく分からないという指摘も受けて、参加国や企業などに対して、早めに内容を公開するよう呼びかけているほか、イベントの発表を積極的に行うとしています。
赤字への懸念も根強い中、開幕までに国内外の関心を高め、来場へとつなげられるかが大きな課題となっています。
【仕組みも詳しく】EVバスに“ワイヤレス給電”導入へ

EV=電気自動車や自動運転など、自動車をめぐる次世代技術の開発競争が激しさを増していますが、大阪・関西万博では会場内の移動の足としてEVバスが走る予定です。
ただ充電に時間がかかるなどの課題があることから、“ワイヤレス給電”という技術が、一部で試験的に導入されます。
その仕組みです。



今回の技術は、道路に埋め込まれたコイルから、バスの車体に取り付けられたコイルに電気が送られる仕組みで、バスが走っている最中も充電されます。
万博の開幕に向けて、運行ルートのバス停付近や専用道路にコイルを埋め込むための工事が本格化していて、将来、この技術が実用化されれば、大きなバッテリーをEVに搭載しなくても、航続距離の向上などにつながることが期待されています。

走行中の“ワイヤレス給電”は、ヨーロッパなどでも技術開発が進んでいて、日本としては開発競争に勝ち抜き、EVの普及にも弾みをつけたい考えです。

今回のワイヤレス給電の技術開発に取り組んだ大阪の電機メーカー、「ダイヘン」の木村治久専務は次のように話しています。
木村治久 専務
「万博は『走行中ワイヤレス給電』で客を乗せたバスを走らせる、日本で初めての取り組みになる。こういう技術があって、便利になる社会がもうすぐ実現するということを世界中の人に体験してほしい」
万博会場の飲食店 運営スタッフ確保に苦戦
大阪・関西万博の会場には、多くの飲食店が出店する予定ですが、人手不足が続く中、運営スタッフの確保に苦戦するところも出ています。

万博の開幕まであと3か月余りとなる中、大阪市内のハローワークでは、会場で働くアルバイトやパートを十分に確保できていないという企業からの要望を受け、面接会を開いています。
面接会に参加した、万博会場でフードコートの運営などを行う予定の会社は、去年の春ごろからアルバイトの採用を始めましたが、予定する200人のうち、まだ半分程度しか採用できていないと言います。時給は会場の外の飲食店より高めの1500円から2000円程度で募集していますが、さらに待遇がよいほかのパビリオンとの人材の争奪戦になっているということです。
面接を受けに来た20代の女性は「万博で仕事ができる機会はなかなか無いので応募しました。忙しいと思いますが、相当、条件が良いのも面接に来た理由です」と話していました。

万博会場でフードコートの運営などを行う予定の「白ハト食品工業」の田中優梨さんは次のように話しています。
田中優梨さん
「万博会場内はすべて時給が高いので、そこに合わせていくしかない。一緒に働きたいという人をしっかり仲間に迎えたい」
万博会場の外の飲食店 人手不足が深刻に
一方、万博会場の外の飲食店の人手不足は、さらに深刻になっています。大阪市内に本社を置く、和食レストランなどを展開する外食チェーンでは、アルバイトやパートの確保に力を入れていますが、万博会場近くの店舗の場合、時給1200円で募集していますが、応募が少ない状況が続いていると言います。
万博の開幕で来店客の増加も見込まれる中、この外食チェーンでは、関西以外の店舗から応援のスタッフを集めることも計画しているということです。
さらに、人手不足の分野で専門の技能があると認められた「特定技能」の在留資格を持つ外国人、120人を正社員として採用したということです。

「グルメ杵屋レストラン」谷徹也執行役員
「飲食業界では、人手不足がずっと続いていて、日本人だけではなかなか賄えず、外国人の採用に力を入れている。時間給だけの競い合いでなく、働きやすい環境もアピールしていきたい」
万博の機運盛り上げへ マラソン大会
大阪・関西万博の開幕まで100日となる3日、万博を盛り上げようと会場が設けられる大阪 此花区の夢洲で大阪陸上競技協会などが企画したマラソン大会が開かれました。

参加者たちが走るのは、万博の会場周辺の10キロのコースで、万博のシンボルとされる「大屋根リング」を間近に見ることができます。
午前と午後に分かれて開催され、このうち午前の部では、全国各地から集まったおよそ1600人のランナーが、博覧会協会の副会長を務める関経連=関西経済連合会の松本正義会長のスタートの合図で一斉に走り出しました。

万博の公式キャラクター、ミャクミャクの自作のコスプレで参加した奈良市の43歳の男性は「『リング』を間近で見たいと思い参加しました。海風を感じながら走りたい」と話していました。
大阪市の20歳の女性は「100日後の開幕が楽しみです。友達や家族と一緒にぜひ来たい」と話していました。
関経連 松本正義会長
「チケットの販売がもう一つしっくり来ておらず、万博への関心に地域差がある。各国とコミュニケーションをとって、『万博の華』とされる海外パビリオンを開花させるとともに、機運醸成のキャンペーンを進めていきたい」