空前の訪日消費に沸く日本。一過性の特需と捉えるのはもったいない。持続的な成長につなげるために奮闘する企業の取り組みを追う。
■主な連載予定(タイトルや回数は変わる可能性があります)
・訪日消費15兆円は日本を救う 「爆買い」後の新潮流(今回)
・渋谷でトイレ巡り 公衆トイレもビジネスに、国内外から参加者集まる
・アサヒビール、訪日客に想定外の「生ジョッキ缶人気」で国内外発信を強化
・JTB、脱「ゴールデンルート」で地方の独自ルートを開拓
・人手不足に逆転の発想 高級旅館や酒蔵、副業や限定開業で資産フル活用
・訪日外国人が頭にネクタイ、ガイド付きツアーがスナック潤す
・4000円ラーメンに行列、高級食材と予約システムで納得価格に
・大阪王将の一人鍋や刃物メーカーの100年ぶり新製品、訪日需要が火付け役
・山本屋、ハラルやビーガン対応の新製品がヒット 「内なる国際化」生かす
「コスパ最高!」。そんな歓声が街中のインバウンド(訪日外国人)から聞こえてきそうだった。
5月の日本各地。1ドル=150円台後半の歴史的な超円安で、外国人たちにとっては、消費対効果が極めて高いお買い得品ばかりに見えただろう。都市部の飲食店や土産物店などでは高額の商品をガンガン消費。京都の清水寺のような著名な観光地は、外国人たちでごった返していた。
訪日外国人の消費意欲は、とどまるところを知らない。2023年の訪日客数は19年のそれに及ばなかったが、消費額においては約5兆3000億円と19年を上回り、過去最高を更新した。24年の訪日客数は19年のそれを上回るのは確実であるため、消費額も過去最高を更新するのは間違いない。政府は30年の訪日客数が6000万人となり、その消費額が15兆円に達するという目標を掲げる。自動車産業の輸出額に迫る規模だ。
訪日消費は低成長にあえぐ日本経済の救世主になり得る。円安による消費者物価の上昇に賃金上昇が追い付かず、24年1~3月期は個人消費が4四半期連続でマイナスだった。そうした中で訪日外国人が宿泊や飲食で消費すると円買いの要因となり、円安の一定の歯止めになっている。訪日消費額が年15兆円もの規模になれば、その貢献度はさらに大きくなる。

ただ、その中身は足元で急速に変わっている。19年のピーク時は中国人が銀座に観光バスで乗りつけ、集団で「爆買い」する光景が見られたが、今はそのような光景はほとんど見られない。実際、23年の百貨店や免税店、家電量販店での消費額は19年より減少しているというデータがある。
統計データを調べると、前回のピークの19年に比べ、訪日客の顔ぶれや志向について、4つの進化が見えてきた。
モノ消費からコト消費へ、飲食×エンタメに殺到
三井住友カードが発表した訪日外国人のクレジットカード消費動向調査によると、23年に特に消費が増えたのは、レジャーや飲食だ。モノ消費からコト消費への転換が起きている。

24年5月下旬の銀座。回転ずし大手のくら寿司が4月に開店した「くら寿司 グローバル旗艦店 銀座」に外国人たちが集まっていた。
ちょうちんが並び、日本のお祭りのような外観のベンチで、外国人たちが順番を待っていた。オーストラリア出身のルイス・ミラーさんは、グーグルマップでくら寿司を見つけ、オンラインで予約をした。ミラーさんがくら寿司に来るのは3回目。「コスパがいいだけでなく、皿を入れて景品を当てるゲームが楽しい」と目を輝かせて語る。自身の予約順番が掲示板に表示されると、小躍りするように友人と店内に消えていった。

店内は外国人が楽しめる様々な仕掛けがある。席で回転レーンに流れるすしを楽しみながら、屋台の商品を座席のタッチパネルで注文し、屋台で受け取ることもできる。わざわざ取りに行くのは手間にも思えるが、同社は「エンタメの一つとして楽しんでもらえている」と見る。
屋台で提供するすしは、通常より強気な価格設定だが、外国人はおかまいなしだ。回転レーンに流れるすしは1皿150円からに対し、特上にぎり6貫で1800円。旗艦店の来店客は外国人が約半数で、通常のくら寿司よりも多いという。
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